パブリックな場のアートのつくり方ふくしごとと商業施設で取り組む障害者アートSDGsプロジェクト
福岡市中央区の天神地下街。交通機関の乗り換えや、商業施設間の移動など、天神地区の人と人、人と建物をつなぐ天神の大動脈です。その中心部にある「石積みの広場」の記念モニュメント制作に、HIBIGEIと障害を持つアーティストの石井さんによって、光りの演出で様々な表情に変化する巨大なパリの街並みが生まれました。
「老若男女いろんな方々が出会ってつながる場所にしたかった」福岡地下開発株式会社 管理部副長 中島惣平さん
SDGsへの取り組みをお聞かせください
SDGsと聞いて捉え方は様々です。それは一人ひとりや企業それぞれのできることに委ねられているから。ふくしごとは、多様な人たちとの関わりから「働きがいも経済成長も」を実現していきたいと考えています。企業や行政の皆様のSDGsへの考えや具体的な取組みをお聞かせください。ゆたかなしごとを生み出し、一緒に働きましょう。ふくしごとへ問い合わせる🙆
SDGsをアートで形に
「天神地下街」さんとできたSDGsなこと。
アートの活用を通じて、魅力的なパブリック空間を創出し、障害のある人が働きがいのある仕事で収入を得る循環をつくリます。
障害者と対話しながら共にデザインし、作品完成までをディクレション。
制作に関わった全ての人たちが、発注者と受注者の関係性を超えて、互いにいいものをつくりたい想いが共有されることが本作品の重要なプロセスでした。
-
Point.1施設空間を象徴するコンセプトを打ち出す
-
Point.2障害者と対話しながら共にデザインし、伴走する
-
Point.3受発注の関係を超えてみんなで一つの目標に向かう
-
- 事業者:
- 福岡地下開発株式会社
-
- 設計・施工:
- 株式会社乃村工藝社
-
- 原画アート制作:
- 石井悠輝雄(工房まる)
-
- アイアン制作:
- 株式会社メタルクリエイト
-
- 照明デザイン:
- Mawatari Design
-
- 写真提供:
- アナバナ
メンバーの振り返り
-
中島惣平さん 福岡地下開発株式会社 管理部副長 「天神地下街の40周年として永く残るもの。中途半端なものじゃ納得しないから」
プロのイラストレーターさんの絵も何案か候補にいただいたんですが、石井さんの絵を見たときに、「僕が求めていたのはこれだ!」とズーンと心に響くものがあって。絵が醸し出している温かい雰囲気がすごく伝わってきたんですよ。老若男女いろんな方々が出会ってつながる場所にしたかったので、温かみが欲しかった。最初は福祉施設にお願いすると聞いて、僕からは中途半端なものじゃ納得しないからというオーダーだけはさせてもらいました。天神地下街の40周年として永く残るものなので、絶対に妥協はしたくなかった。「絵を描く」というアートと、「鉄の芸術」としてのアイアンアート、照明による光のアート、それらが繋がってひとつのアートになるのですが、誰も最終形は分かっていなかった。だから除幕式の時はみなさんウルウルされていて、かなり感動しました。みんなの気持ちがひとつになって、天神地下街40周年を飾るにふさわしい作品ができて、本当に記念になったなと思います。
-
工房まる 石井悠輝雄さん 「もっとみんなの作品もいろんなところで使ってもらえたら」
「通るかどうかわからないよ」と言われていたんですけど、まさか通るなんて、かなりびっくりしたのを覚えてます。ガイドマップなどを見ながら、名所と思われるところを入れました。配置がかなり難しかったですね。除幕式の時にはじめて現物を見て、立体的で光も変わるし、「すごい仕事に携わらせてもらったな」と感無量でした。本当に、やって良かったです。絵の依頼が増えてきているのは嬉しいんですけど、仲間もいろんな絵を描いているので、もっとみんなの作品もいろんなところで使ってもらえたらと思います。
-
四ツ谷昌紀さん株式会社乃村工藝社 九州支店営業部チーフ 「誰もが手探りで進めた感じ。絵、鉄、照明、それらが繋がってひとつのアートになる」
実はこのような案件は弊社も初めてで、地下街さんも含め、現場で試行錯誤しながらみんなで作り上げていった感じです。石井さんに描いていただいた絵は、パリの名所がほとんど網羅されているんです。「パリのメジャーどころを凝縮したい」っていうざっくりしたオーダーが、ちゃんと実現されてて感心しました。東京にあるアイアンアートの会社に製作をお願いし、原画をもとに、鉄板や鉄の棒を何層か組み合わせて絵にはめ込んでもらったんです。ですが照明を当てたら、最初はだだの影絵みたいで面白みがなくなってしまって・・・「石井さんの絵を活かすにはどうすればいいのか」とかなり苦戦しましたね。
-
ふくしごと 先崎哲進[クリエイティブディレクション担当 / 取締役] 「発注者との間に立ってイメージを具現化するコーディネイトが重要」
デザインの現場で「福祉施設の作品を使う」という選択肢って、なかなか生まれてこないんですよね。今回の作品で「こんなにすごい仕事ができる」と堂々と言えるようになれた。障害アートのイメージを変えるいいPRの場になりましたし、このような事例が増える機会になれば。今回のような大きなプロジェクトは、施設だけで進めていくのはなかなか難しいので、発注者である企業や行政との間に『ふくしごと』が立って、発注者と受注者の関係性を超えて関わるメンバーの想いが共有され、イメージを具現化するためのコーディネイトをできたらと思っています。